Interverse Virtual Reality Challenge (IVRC)

実行委員長挨拶

IVRC実行委員長 稲見昌彦 (東京大学 総長補佐・教授)

2020年度、IVRCの二代目の実行委員長に就任いたしました。

今から31年前、私が学部4年生だった1993年『第1回学生対抗手作りバーチャルリアリティコンテスト』(IVRC)が開催されました。ロボットサークルの友人たちと様々なVRデバイスを開発していた私たちにとって、IVRCは絶好のチャンスと思い即座に出場を決心し、幸い総合優勝と技術賞を授与されました。

書籍や論文の中でしか名前を存じなかった第一線の研究者、メディアアーティスト、企業の方々に自ら制作したシステムを体験して頂き、親身にコメントを頂けた感動が原体験となり、いつしかVRに関わる研究者を志すようになりました。

現在、VRを取り巻く状況も大きく変化しました。もはやVRを作ることだけでなく、どのようにVRを活用するかという視点も重要となっています。

そこで今年度から新たに「メタバース部門」を設置することにしました。従来からのオリジナル部門は伝統的に独自のハードウエアを用いて構築された画期的なVR体験が評価されていました。それに対してメタバース部門は、市販されているVRデバイスのみを用いて提供される斬新な体験や感動を評価することになります。

とはいえIVRCのビジョンは不変です。改革にあたり、以下IVRCがIVRCであるための3原則と、新たな3つのチャレンジを掲げます。

IVRC基本3原則

1.IVRCは「登竜門」です

IVRCは、まだ名前のついていない何かに挑戦するあなたが、その具現化によってあなたしか想像ができない何かを実現し、人々に届けることを応援します。

2.IVRCは「コミュニティー」です

IVRC誕生から30年近く経ち、私も含め過去にIVRCに出場した方々が現在様々な業界・分野で活躍しています。そしてIVRCのOB/OGとして職場を超えて交流しています。IVRCの大きな価値は、VRの未来への視点を共有できる審査委員・実行委員・OB/OG・出場者・スポンサー企業によるコミュニティーにあると考えます。IVRCは魅力的なVRコミュニティーを提供します。

3.IVRCは「IVRC」です

IVRCは当初の『学生対抗手作りバーチャルリアリティコンテスト』から『国際学生VRコンテスト』など、時代によってIVRCのIが意味することもIntercollegiateやInternationalなど使い分けられてきました。今後もIVRCは「IVRC」でありたいと思います。ただし、今後は複数の国や組織だけでなく、複数の空間をつなげるようなInterverseであり、学生を育てるIncubationでもありたいと思っています。そしてVRも拡張現実感(AR)、縮減現実感(DR)、複合現実感(MR)などxRといわれている分野も含む広い意味でのVRととらえています。これは日本VR学会と同様の見解です。

そして「手作り」の重要性も不変です。現在、生成系AIの隆盛により、誰もがコンピュータにより自動的に文章や画像を生成できるようになってきました。今後のメタバースはAIが生成した空間でNPTと交流することが当たり前となるかもしれません。そんなAI時代だからこそ、当初のIVRCが掲げていたレトロニムとしての「手作りVR」楽しさや重要性が高まったとも言えます。

AIにより作るコストが劇的に下がったとしても、作ることの楽しさは不変の価値だと考えています。どれだけ名歌手がいてもカラオケの楽しみは変わりませんし、レストランの名シェフの料理と自分たちで作った料理とは別種のおいしさがあります。新たなテクノロジーを使いこなしつつVRの固定観念を打破し、未来のVRを希求する自らの手で構築する、それこそがIVRCの変わらぬ伝統です。

IVRC3つのチャレンジ

1.IVRCは「コンテスト」から「チャレンジ」に変わります

IVRCは伝統的に、誰かが決めたルールの中で勝負をするのでなく、居ても立っても居られないほど作りたいもの、どうしようもなく表現したいことをぶつける場でした。よって従来のように序列をつけるコンテストから、各チームのチャレンジをさまざまな観点で評価し、顕彰する「VRチャレンジ」として生まれ変わります。そして、IVRCも、会場に物理的に集まることなく個別の参加者と、審査委員と、聴衆とをオンラインで接続した「Interverse開催」にチャレンジします。

2.IVRCは「SEED STAGE」「LEAP STAGE」の2ステージ制とし、「SEED STAGE」をメインイベントとします

IVRCの価値は前述したようにそのコミュニティーにあります。過去に岐阜県で開催されていた時には、泊りがけでチーム同士が昼夜を問わず交流できるような機会がありました。従来の予選会に相当する「SEED STAGE」を人を育て、コミュニティーを作る場としてとらえ、全国各地で開催されるVR学会大会と連携しつつ開催し、内覧会を兼ねた交流会を行うことで、出場者がチームの枠を超えて審査委員・実行委員・OB/OG・スポンサー企業と交流する機会を増やす予定です。なお、2020年度はオンラインツールを活用したVR開催を予定しています。

「LEAP STAGE」は世界に向けて打ち上げるステージです。「SEED STAGE」で交流したスポンサー企業の支援を受けたり、複数のチームが協力したチャレンジを応援します。

3.IVRCならではのユニークな審査を行います

参加者のチャレンジを多角的に評価するため、合議形式の賞選考委員会に加え、各界で活躍している冠審査委員の方々に加わっていただきます。冠審査委員は目利きとして各々の観点でで審査委員の名前のついた賞を選定します。「LEAP STAGE」にて「IVRC Grad Prix」は決めますが、憧れの審査委員による冠賞をぜひ目指してください。

以上のようにIVRCは学生の皆さんのチャレンジを今まで以上に強力に応援します。

  • まだ言葉になっていない”ナニカ”に挑戦する
  • ”ナニカ”をつくる仲間ができる
  • “ナニカ”を具現化し世に広める

そんなIVRCでありたいと思います。新生IVRCへのエントリー、お待ちしております。また企業の方々はスポンサーとしてぜひ私たちのチャレンジへの応援をお願いいたします。